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舞台や展覧会など、さまざまな鑑賞活動の記録を綴る。タイトルとの関連はありません。


by turujun
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知られざる鬼才 マリオ・ジャコメッリ展@東京写真美術館

特別な予定なく過ごしていたGW、これではあんまりなので東京都写真美術館で開催されていた「マリオ・ジャコメッリ展」へ足を運んだ。

その理由は…すいません、チケットショップで会期終了を間近に控え、投売りされていたから。

でも、この値段だけの選択であるにもかかわらず、思った以上の満足を得た。

東京都写真美術館という会場からして、写真の展覧会であることは間違いないのだが、そこに展示されていた作品は、現像の技術により単なる写真からさらに変貌しているものが多く見られる。
全ての作品はモノクロだが、現像の時点で明度のバランスを極端にし、版画のようにしたり、陰影を飛ばして人物の姿が強調されるようにしている。それにより、写真から余計な情報が取り除かれ、より詩的な表現へと近づいていているようで、そこが面白い。

撮影している被写体は人物もあれば植物もあるし、静物もあるとさまざまなのだが、その選択の基準は一般的な美しさにはない。ジプシーの子供や、イタリアの地方で昔ながらの暮らしを続ける人々、ホスピスの人々や神学校の学生など、きらびやかさから遠く離れたものばかりだ。
そしてそれらを納めた写真のほとんどは現像の加工により、躍動感や生命の息吹といったものが封じ込められているような作品へと仕上げられる。
そこには、死が生と切り離すことができないことを示すかのように提示されている。

個人的に一番気に入ったのは「私には自分の顔を愛撫する手が無い」の作品群。雪原で戯れる神学生の姿とタイトルがほのめかす彼らの未来の間にある絶望が焼き付けられているように思えてくる。
by turujun | 2008-05-05 13:00 | アート