「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか」このブログの本文作成欄の横幅一杯に文字が並ぶほど長いタイトルの本。
この本は、タイトルが示すとおり、山形県酒田市に世界一と評された映画館「グリーンハウス」と、日本一と評されたフランス料理店「ル・ポットフー」をつくった故・佐藤久一氏の伝記。
タイトルは上記のとおり大変長いが、気がついたら1時間ぐらいで読み終わるぐらい、面白い。
以下ほぼネタバレです。
映画館であってもレストランであっても、常にお客様の幸せのためにできることを考え、それを実行していく一方で、それによるコストは全く考慮しなかった佐藤久一。
映画館およびレストランの初期は、財政的なバックアップがあったことと、経費面のコントロールができる人材がいたことから、時流を先取りした施策を次々に打ち出すことができ、それがことごとく当たっていったが、年月を経るにつれ、時代の流れによる消費者行動の変化や、競合他社の登場へ対応ができなかった一方で、人件費・材料費を度外視したサービスの追求と、本人のアルコール中毒の悪化による人材の離散、それにともなうサービスの質低下により、赤字はどんどん増えていき「ル・ポットフー」は経営危機へと追い込まれ、ついにはそこを追われてしまう。
前半の華やかさからすると、いくつかの店を転々としながら再起を図るも、アルコール中毒の悪化や食道ガンの罹患などにより思うようにならず、新しい店の構想を抱きながら他界するという寂しい晩年、また酒田の町に残した功績が一つの、大きな失敗により封印されてしまっているという現在は残念としか言いようがない。
ただ、本人にとって、酒田の町のためにやってきたことが賞賛を得ることを目的にしているのではなく、そうすることが自分の喜びであり、自己表現でもあったのだろうと思われるところが救いなのではないかと思う。
この本を読んでいて分かるのは、お客様に最高のサービスを提供することが大切であるというのはもちろんなのだが、コスト管理ができてこそ、そのサービスを提供する場が存続できるという当たり前といっては当たり前の事実。
何だかんだ言われても、サイフの紐をきちんと握っている人材というのは何かことを起こす上で必要不可欠なのだと実感させられる一冊だった。
【余談】
演劇制作者向けウェブサイト「
fringe」で「いますぐ読んでください。そして、劇場に観客を呼ぶアイデアはいくらでもあることに気づいてください。制作者必読の一冊です。」この本を激しくプッシュしてます。
アイディアとその実行力という点では大いに参考になると思いますが、合わせて「理想の追求も良いけど、コスト管理もきちんとね!」という反面教師的な部分もぜひ押さえてもらいたいなあなどと個人的には思わないでもないです。