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舞台や展覧会など、さまざまな鑑賞活動の記録を綴る。タイトルとの関連はありません。


by turujun
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Studio Salt「SOMEDAY」@横浜相鉄本多劇場

面白いといううわさを聞いて、気になっていた椎名泉水。今日、彼女が作・演出を手がけるStudio Saltの公演「SOMEDAY」へ足を運んでみた。

作品が始まってから気づいたのだが、この作品にNEVER LOSEの谷本進氏が客演していた。確かアゴラでNEVER LOSEを観て以来なので、ずいぶん久しぶりな感じ。本拠地ではこんな感じなのに、今回はいたって普通な妻子もちのおじさんを演じていて、しかもそれがちゃんとはまっているから意外。


この作品の舞台はどうやら逗子のあたり(作品中で「小坪に住んでたから…」というセリフがあったのと、海の近くの喫茶店が舞台なので)。
設定としては40になりかけぐらいの人々の話。

いろいろなごたごたがあっても、どことなく甘酸っぱく切なくもさわやかな結末を迎えられるのは、湘南パワー(セリフに「小坪に住んでいて…」というセリフがあったので、ここは逗子か葉山?だとしたら厳密には湘南ではないけど、そういうニュアンスでセットがデザインされていたので)のなせるところなのだろうか?といいたくなるぐらい、地の持つイメージをちょとあざといぐらいに盛り込んでいる作品だ。

上にも書いたとおり、NEVER LOSEの谷本進が今回演じた役は、実際の年齢よりは上という設定、NEVER LOSEで演じる役と比べると10歳以上違うんじゃない?(以前観た作品がかなり前だから何とも言えないのだが…)というところなのだが、髪の毛が黒いのもあいまって、17歳の子持ちで、しかも子供とのコミュニケーションがイマイチちぐはぐな、門限にうるさい父の顔と、不意に思わぬ過去と思わぬ事実を知られて困惑している夫の顔、友情と佐野元春を大切にする一人の人としての顔を持つ人物を意外なくらいに好演していた。
彼の学生時代からの友達役を演じた人々は、全てStudio Saltの劇団員なのだそうだが、当て書きをしているのかもしれないが、非常に一人ひとりキャラクターに嵌っていて、それぞれに違った面白さの個性がある。また、劇団員ならではのチームワークのよさがにじみ出る感じがまた良い。モダンスイマーズといい、MONOといい、「劇団員のチームワーク」が感じられる舞台は観ていてほっとする。
一方、この作品の毒の部分をになっているのは女性であるように思えた。男性のキャラクターの作り方に比べ、本音と建前が明確に感じられ、より残酷でしたたかな側面が見え隠れするように作られていたように思えるのは気のせいだろうか?

内容は、「東京の舞台でこういう話を書く人ってあんまりいない」という感じのものだった。
作・演出の椎名泉水が当日パンフの内容から察するに、東京の小劇場界隈で活躍する世代と一回りぐらい違うということがその理由かと思われるが、東京の人々(荒っぽいくくりだが、とりあえず)に比べると、書くテーマといい、描き方といい地に足が付いている。
舞台の設定ゆえにTVドラマでこういう話がありそうな気がしないでもないのだが、夫婦の関係や親子の関係、友達同士などの人間関係軋轢とその回復を描く今回の物語のテーマ自体は普遍的なもの。それを演劇的に尖がりすぎず、かといって旧来の表現に固執するでもなく、観ていて安心できる形でみせるこの劇団の表現は、定義しやすいものではなく、また定義されたところで派手にもてはやされる類のものではないけれど、一種独特といって良いのでは。

若い人よりは、40代前後の人が観ると思うところの多い作品ではないかと思われ。
by turujun | 2008-05-30 23:17 | 演劇