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舞台や展覧会など、さまざまな鑑賞活動の記録を綴る。タイトルとの関連はありません。


by turujun
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風琴工房「hg」@下北沢ザ・スズナリ

ひさびさに観た風琴工房。今回は水俣病を取り上げ、前半は水俣病発生当時のチッソ内の暗闘を、後半では水俣にある共同作業所を舞台にそこに通う水俣病患者とそこに集う人々の姿を描き、障害を持つ人と、社会とのありようを問う作品だった。

この作品のポイントは何といっても水俣病を加害者・被害者どちらか一方だけを描いているのではなく、その両方を取り上げたというところ。そして前半で加害者の中心人物を演じた役者が後半では共同作業所の利用者を演じているというところだ。
しかも、役者がその患者を演じている後半の劇中で「水俣病患者が一番嫌がることは真似をされること」と語る場面を入れている。演じることは真似ることと繋がるだけに、劇中内で「やってほしくないこと」と示しながらその実そのことをやるという、一見矛盾していることをやってのけるのは上演する側としてはかなり勇気のいることだったのではないだろうか。
それを成功させたのはやはりこの難しい二役を演じた客演陣の力なのだろうと思う。

客演陣の力量がこの作品を深みのあるものにしている一方で、この劇団の若手が大挙出演する後半はそのギャップゆえに惜しいことになっていた。。前半はほとんど客演陣による会議の場面のためそんなには気にならないが、後半になり若手劇団員が登場すると、必要以上に声を張ってセリフを言う声が非常に耳につく。それが一人なら良いのだが、若い劇団員のほとんどがそうなのと、互いが声を張り上げてせりふを言うのが相乗効果になるのか、その傾向がどんどん強まっていきどんどん声が耳障りな響きをもって大きくなっていったので、話云々以外の部分でちょっと苦痛ですらあった。

そんなふうに若干ダメージは受けてはいるものの、若手を重要な役で出演させるあたりが、劇団のやる気の表れなのだろうと思いもする。今回の作品のテーマやこういうところに「演劇」に真摯に取り組むこの劇団の姿勢が感じられる。
by turujun | 2008-05-18 15:00 | 演劇