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舞台や展覧会など、さまざまな鑑賞活動の記録を綴る。タイトルとの関連はありません。


by turujun
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ひょっとこ乱舞「トラビシャ」

最近新しい劇団の作品を観てないな…と思い、アゴラへむかった。
チケットとアンケートを受け取ると受け取り、アンケートと一緒に、携帯から空メールを送るよう指示するメモが。登録すると、作品にメールを通じて参加できるという仕掛け。座席にはラジオがおかれていて、作品中で何度か使われる副音声をそれで聞くようになっていた。いろいろな試みを用意していて、その意欲やよし。

以下、ネタばれあります。







作品の内容はというと、若い女性が自分の子供を殺してしまい、そのことをネット上の相談サイト(教えてgoo!みたいなものか?)で打ち明けることで、話がいろいろ展開していく、というもの。
「携帯電話」「ネット(携帯サイト掲示板)」そしてリアルな世界の3つの世界を行きつ戻りつしながら人と人とのリアルな関係とITがつなぐ関係を描くというのは、現実世界を反映しているといえると思うものの、そのフレームをうまく活用できていたかというとそれは疑問。
また、戯曲の内容にあまりリアリティを感じられなかった。新聞やTVのニュースで取り上げられているようなことをいくつか組み合わせて、さっと作ったような内容であったように思う。また、戯曲の構造も台詞が妙に詩的だったかと思うと説明的になるなど、創り手の都合の良いように創られている印象を受けた。

創り手は、「今」のインフラを反映し、「現代社会の暗部にある人々」を描きたかったのかな…と思うのだが、創り手自体の作品の創り方が従来の演劇のそれであるために、いろいろな仕掛け(携帯メールによる作品への参加やラジオによる副音声の活用)が、一つの飛び道具としてしか機能していなかった。もったいない。


ただし、彼らが用意した仕掛けがものすごく上手く働いていた場面が一箇所だけある。
それは本編が終わった後に主宰の広田氏が行うアフタートーク。
ここでは役者によるリアルタイムの副音声がラジオで聞くことができ、そのなかで随所に観客に対する「指示」が入るのだ。今回、私を含め観客がそれにしたがって拍手したり、一斉に突っ込みを入れたりしたのだが、そこに生まれる観客と広田氏とのずれ、そして副音声と観客の共犯関係が非常に楽しかった!
一生懸命に話をしている広田氏には申し訳ないのだが、これぞ観客参加型といえるのではないかと思う。こういう観客との一体感が、本編にもあったらよかったのかもしれない。
by turujun | 2007-09-30 17:35 | 演劇