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舞台や展覧会など、さまざまな鑑賞活動の記録を綴る。タイトルとの関連はありません。


by turujun
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シッコ(マイケル・ムーア監督)@品川プリンスシネマ

最近映画見てないな…と思っていたら、今日は映画の日だ!ということで、私の御用達映画館品川プリンスシネマにて、「シッコ」を見てきた。

今回はアメリカの医療制度に対する批判が主な内容。基本的にはアメリカ人によるアメリカ人に向けた映画だが、そうでない私も非常に考えさせられる映画だった。

この映画は、アメリカ政府が躍起になってフィルムを押収しようとしたとか、それを恐れたマイケル・ムーア監督がコピーを海外に持っていったとかいろいろあったらしい。それはそうだろうと思う。結構過激。

全編を通して、医療費がべらぼうに高いとか、病院で必要と診断された治療が保険会社が「その治療は不要!」といって治療費の支払いを拒否されてしまい治療が受けられなくなってしまうとか、そもそも簡単には医療保険に入れないようになっているとか…まじめに生きてきた人までも貧困の淵に叩き落してしまうこともある(実際そういう人も出てくる)アメリカの医療保険制度のこわーい事実がいろいろな人の証言(実際に保険会社で働いていた人のコメントまである)、連綿と綴られている。話としては知っていたけど、ここまでとは…というすさまじさ。
その比較としてカナダ・フランス・キューバ・イギリスが取り上げられている。この4カ国はすべて医療費がタダ、なんだそうな。フランスについては、医療制度だけではなく、さまざまなゆとり制度が大・大フィーチャーされていた。(有休が最低5週間とか、ハネムーン休暇がそれに+7日間取れるとか、病気になったらその治療に必要な期間の有休が取れる(要医師の診断書)とか、新生児の母親の家事をサポートするナニーの派遣とか教育費が大学まで無料とか…。)アメリカの厳しい現実に対し、良いところだけ都合よく切り貼りしている感もかなりあるものの、うらやましいよ、フランス。

悲惨かつシビアな現実を、映画・ニュース・ビデオなどさまざまな映像ソースに、スターーウォーズのオープニングをパロッたシーンなどおりまぜて、非常にポップに見せていく。結構きっついことをユーモアたっぷりに表現していて、そのたび劇場内爆笑だった。このあたりの映像と音楽のチョイスや組み合わせのうまさのおかげで、この映画は単に重い社会派映画にとどまらず、ある意味エンタテインメントとして成立しているのだろう。

この映画の中で一番印象に残ったのは、フランス在住アメリカ人のグループインタビューの中でのある人の発言。メインはフランスの医療福祉制度の大充実ぶりとアメリカのそれらの貧しさなのだが、その中で「フランス人は何かあったら必ず声を上げるから、政府が国民を恐れている。でもアメリカ人は政府を恐れているから声を上げない」という台詞があって、これが意外だった。アメリカ人って結構意見をはっきり言う人たちという印象があるのだけど、当のアメリカ人が外から自国を見るとそう感じるものなのだろうか。
医療問題について語りつつも、このコメントまでも映画の中に入れたということは、この映画で一番言いたいのは、問題に気づいたらそれに対して声を上げようぜ!何か行動を起こそうぜ!ということなのだろう。
by turujun | 2007-09-01 23:09 | 映画