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舞台や展覧会など、さまざまな鑑賞活動の記録を綴る。タイトルとの関連はありません。


by turujun
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猫のホテル「しぶき」@下北沢ザ・スズナリ


 9月26日(日)の雨降る午後に、私は下北沢ザ・スズナリにて猫のホテル「しぶき」を観た。
 この作品は、1999年初演の作品。日本人がみなバブルに踊っていた頃に、世間の荒波にドバーンッと揉まれながら必死に生き、転落していく若い男女の物語。いつもの猫のホテルに感じるような、チンピラとその犠牲者の生き様みたいな腹黒さはない。80年代の世相や流行がパロディ的に「かなり恥ずかしいもの」として盛り込まれている。
 舞台は二人の生きる場所がころころと変わるのにあわせ、86年年末の新宿コマ劇場の北島三郎の楽屋から六本木のヘアサロン、銀行の応接室、果ては建設現場の宿舎とめまぐるしく変わっていく。それにあわせて、登場するキャラクターの数もかなり多い。だけど、客演の2人(中村竜from ラブリーヨーヨー・依田朋子)以外はいつもの猫のホテルのメンバーなので、いきおい劇団員が複数の役を演じることになる。とはいえ、中村まことはやはり小悪人役だし、市川しんぺーは中間管理職的、池田鉄洋は訳の分からないフェロモン出している役(北島三郎の楽屋ではなぜか蜷川幸雄の物まねをしていたが)、と「いつもの」役回りと変わらない。いってみれば、良くも悪くも猫のホテルの特徴であるキャラ芝居ということ。
 その中で、カラーの違う幾つもの役を演じて、今回それぞれいい味出していたのが、森田ガンツ。彼は猫のホテル創立当時からのメンバーであるにもかかわらず、他のキャラクターの立った役者に比べると少々キャラクターが地味で「食われて」しまうことが多い。だが、今回の「しぶき」では、華道の家元、演歌の作家?といった大物キャラから妻に捨てられる男や建設現場の作業員など、それぞれに全く異なった役柄でありながら、器用に、というのではなく、それぞれに明確なキャラクターを持たせ、かつところどころに茶目っ気を見せながら演じ分けていた。いつもはみじめったらしい役が多印象の彼だが、今回の作品で、猫のホテルにしては珍しくキャラ優先ではなく役をみせる役者なのだと認識。つまり猫のホテルの名バイプレーヤー的存在といって良いのではないかしら。
by turujun | 2004-09-27 23:41 | 演劇